ゴブリン——。それはファンタジーを題材にした小説や映画などに出てくる邪悪さを持った精霊で、悪い意味でのモンスターのような存在として描かれることが多い。見た目は醜い小人となっているものが主流で、いたずら好き、おふざけ好きの一面がある。その源流はヨーロッパの民間伝承であり、ノームやドワーフといった小人型の精霊の一種なのだろう。「指輪物語」シリーズ(映画化作品がロード・オブ・ザ・リング)に出てくるイメージがゴブリンを世界に影響を与えたのは間違いないが、実際には「指輪物語」以降はオークという名前に変更になっている。
映画「ラビリンス/魔王の迷宮」では主人公の少女(ジェニファー・コネリー)に興味を持つゴブリンの魔王が彼女の弟をさらうのだが、その魔王は先日亡くなったデヴィッド・ボウイが演じ、金髪でスマートな容姿である。もちろん作中に出てくるゴブリンたちは一般的なゴブリンのイメージで描かれ、ほぼすべてがマペット(監督ジム・ヘンソンがつくり出した人形劇一団)が演じている。
ヨーロッパだけでなく日本のゲームにもモンスターなどとして出てくることの多い精霊なので、なじみがある人も多いだろう。だいたい強くない敵として出現するだろうが。
そんなゴブリンの名を冠した深海魚が話題になったことがある。「ゴブリンシャーク」だ。TOKIOのメンバーが「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ系列)で捕獲した、名前にも負けない禍々(まがまが)しい見た目をしたサメである。合成か作り物なんじゃないかと思われるような形状だが立派な魚である。
日本での名前は「ミツクリザメ」。ネズミザメ目ミツクリザメ科に属している。見た目と英語名のインパクトがあるだけで実際には未確認生物ではないが、このゴブリンシャークは希少種でもある。日本の駿河湾や相模湾などで目撃されているほか、世界各地でも目撃報告がある。しかし、水深1300メートルほどの深海に生息しているのだ。
サメの仲間には多いのだが、頭部、そしてアゴが大きく突き出ている。鼻にあたる部分が突出し、また口の付近が独立して突出している2段階での突出のため、一般的なサメのイメージよりも奇妙なデザインに感じるだろう。大きさは2メートルくらいのものが多いが、大きいもので5〜6メートルもあるため、容姿の奇妙さと合わせて、邪悪な精霊の名前をいただくのも理解できる。
しかし、この名前も日本で一般的に「テングザメ」と呼ばれたものが英訳されて「ゴブリン」となったらしい。また鼻のように見える突起は柔らかいため、攻撃に向いておらず人間に危害を加えることもなかった。恐ろしい口の突出も、捕食の際にしか飛び出ない。深海は未知の領域が多く、解明が楽しみな世界である。
【関連動画】The Goblin Shark, Disturbing One of a Kind Footage
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