8月17日、琉球大学などのグループが長崎県対馬にいたカワウソの映像を公開した。動画は今年の2月6日に撮影されたもので、国内でカワウソが生きている状態で発見されたのは38年ぶりのことである。
このカワウソが絶滅したとされるニホンカワウソなのか、韓国沿岸に生息するユーラシアカワウソが流れついたものなのか確認できていない。
環境庁は7月から行った痕跡調査の際に発見したフンのDNAを調べたところ、ユーラシアカワウソのものだと判定されたと発表した。しかし、このフンが琉球大学が撮影したカワウソのものかどうかは不明だ。
ニホンカワウソはかつては広い地域で見られたが次第に減少し、2012年には絶滅種に指定された。
38年前、1979年の高知県内での目撃が最後で、個体が保護されたのは1975年の愛媛県の事例が最後である。
カワウソは水泳が得意で南極、オーストラリア、ニュージーランド以外の全世界の水辺に生息している。カワウソの仲間であるラッコは水上で暮らしているが、それ以外の種類は陸上でも行動する。
このカワウソ、日本ではタヌキやキツネのような実在する動物の一種でありながら、妖怪として人間をだます存在として親しまれてきた。漢字では「獺」と表記する。
カワウソに関する伝承および伝説は日本各地にあり、美女や坊主に化けて人間をだましたり、驚かせるものが残っている。中にはアイヌの昔話で、人間に化けて人間の娘を殺そうとしたものもある。
人間を化かす以外には、青森県では人間に取りつく妖怪だとも言われている。
我が国で親しまれている水辺の妖怪に「河童」もいるが、この河童もカワウソの見間違えだという説もある。現在の河童のイメージは爬虫類のようなツルツルした肌が主流だが、古くは体毛が生えた獣のような絵も残されている。
河童と河童の亜種は日本各地に分布しており、こうした水辺の生物を誤認した可能性は高い。
静岡県に伝わる「川猿」という妖怪もサルというよりは河童やカワウソに近いのではないかと言われている。カワウソのような体毛の生えた獣が川を優雅に泳いでいたら物珍しくて妖怪だと思ってしまうかもしれない。
他にもカワウソが人間らしい行動を取る例として「獺祭魚(だっさいぎょ)」というものがある。これは中国の七十二候のひとつで、2月の20日ごろを指す。カワウソは餌である魚を捕らえると川岸にきれいに並べる習性があり、それが先祖に供物をささげているように見えるために、カワウソの行う祭儀と解釈した。その季節を獺祭魚と呼んだのである。
日本では9月19日を「獺祭忌」と呼ぶこともあるが、これは正岡子規が自身を「獺祭書屋主人」と称していたことに由来し、子規の命日を指す。
現在はペットとしてもかわいがられ、動画でも人気のあるカワウソだが乱獲の理由は害獣として駆除されたことによる。カワウソの毛皮は保温性が高かったために人気もあった。
また、農薬が普及して日本の河川の水質汚染が進み、カワウソがすめる環境ではなくなったという側面もある。人間のエゴによって絶滅の危機に瀕した面は否めない。今回の発見を長い目で見守りたい。
【動画】撮影された最後のニホンカワウソ 〜新荘川 1979年〜